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私はうたで生きていく。
好きなことを仕事にしたい!
誰もが一度は考えたことがあるだろう。
ただし、それは一筋縄では行かないことも多い。
どうすれば本当に好きなことが見つかるのだろう?
本当に好きなことを仕事にできるのだろう?
そのヒントを “好きを追いかけ、好きを仕事にした” 曽根妙子さんに聞いてみた。
――「うたで生きていく」と道を決めたきっかけはなんだったのでしょうか?
「うたを仕事にしよう」と決めたのは中学2年生の時です。受験がきっかけで自分の進路について初めて真剣に考ました。
私の中で「受験というのは自分の人生を決めること」という感覚があったんです。
そこで、「私は一生をかけて何をやりたいんだろう」と自分に向き合ったときに「うたがやりたい」と強く思ったんです。それ以外に選択肢がなかったいう方が正しいかもしれません。
「このためだったら本当に頑張れるものって何だろう?」と考えた時に、うた以外には考えられませんでした。
それで、両親に「音楽の学校に行きたい」と打ち明けたら、「きっと諦めることになるから辞めた方が良い」と諭されてしまいました。
私は小学校4年生からずっとバレーボールをやっていて、一応エースアタッカーでした。バリバリの体育会系です。なので、音楽系の部活は入ったことがなく、もちろん合唱部の経験もありませんでした。そんな私がいきなり「うた」と言い出したので、びっくりさせたのだと思います。
結局、「県内の進学校に入れたら、歌を習ってもいいよ」と言われ、必死で勉強しました。
成績は決して良い方ではなかったのですが、「これができたら歌えるんだ!」と思ったら不思議と頑張れたんです。
――中学生より前は、歌手になりたいとか、将来の夢みたいなものはなかったんですか?
パン屋さんになりたい、と何かの文集に書いた覚えがあります(笑)
高校受験について考えるまでは、うたを将来に結び付けたことはなかったです。ただ、小さい頃はずーっとうたっている子供でしたね。歩きながらも、食べながらも。うるさいと怒られると、頭の中で延々とうたっていました。
曲が流れている場所でも、自分のうたいたい歌をうたいだすし、いつでも自分の世界に浸っているような子供だったので、周りからはよく変わった子とか変な子と言われていました。
周りの話も授業も大して聞いていなかったのもあってか、勉強は得意ではなかったのですが、歌詞を覚えることだけは驚異的に早くて、感動した歌詞は一回聴くとすぐに覚えて自分でうたっていました。
――たえこさんにとってうたは当たり前にある存在だったんですね。
そうですね。歌いたいから歌うのではなく、気が付くと歌っている。(笑)
話すのと同じような感覚だったと思います。
これは昔も今も変わらないですね。昔は、変わった子だと思われることに抵抗や疎外感を感じていたのですが、「こころうた」を大切にするようになってから「自分は人と違う。でもそれでいいんだ」と自分を素直に認めることができるようになった気がします。
今年5月にコンサートで訪れた八丈島にて。
――「好きを仕事にする」とか「仕事を好きになる」、「得意を仕事にする」など、仕事の選び方って色々あると思いますが、妙子さんはどう考えますか?
私は、自分がそうだからというのもありますが、好きなことを仕事にしたいタイプです。
私の場合、好きなことならずーっとやっていられます、それこそ倒れるくらいに(笑)。
※当時の様子は「過去の挫折とそこで見つけた本当に大切なもの」で語ってもらっています。
逆に好きじゃないことって、どんなに条件が良くても最終的には辛くなってしまうんです。大学時代、パソコンの入力作業のアルバイトをやっていました。
とても待遇の良いところで、シフトは自由に組める、時給も良い、レッスン室は使い放題、楽譜も借り放題という、私にとってこれ以上ないって思えるほどの好条件でした。
それでも私は、「この勤務時間の全てを音楽に充てられたらどんなに素敵だろう」と考えてしまったんです。バイト仲間は「最高」と言っていたアルバイトも私にとっては「苦痛の時間」でした。
もし、寝ても覚めても続けたいって思える程に好きなことがもしあったら、とことん取り組んでみてほしいなって思います。
――「好きだからこそ頑張れる」という気持ちが妙子さんの原動力なんですね。でも、嫌になったり、嫌いになったりしたことはなかったんですか?
うたを嫌いになったことはないですね。できない自分を責めたことはあります。大好きだからこそ、できない自分に、うまくいかない状況に我慢できなくなるんです。
嫌になった、嫌いになった、と感じたとしたら、むしろ好きの裏返しじゃないかな?と思います。
「愛の反対は無関心」という言葉があるように、好きも嫌いも、表裏一体なんだと思います。大好きなのに思い通りにいかないから、ショックを受けて嫌いになったように感じてしまったのかもしれません。
もちろん、好きなことを選ぶからこその辛さもあります。私もうまくいかない時や、思い通りに進まない時、他の仕事を選んでいたら感じていないであろう絶望感や、八方塞がりの感覚に追いつめられることもあります。
だからこそ、一番大切なことは、「やめられないほど好きなこと」に出会うことだと思います。
私は、否定されても、へたくそとか夢は叶わないとか言われても、うたえない体になっても、それでもどうしてもうたを諦められなかった。それくらい好きだったんです。
そしてもう一つ私が大切だなって思っているのが、「好きでいることを諦めないこと」。
私は、自分に何かものすごい技術や才能があったからここまで来れたとは思っていません。ただ、うたが好きで好きで仕方がないし、思い通りにいかなくても、好きだからやり続けていただけなんです。
好きだからこそ嫌になることもあるけれど、好きな気持ちを大切に持ち続けて欲しいなって思います。
ー 編集後記 ー
みなさんはこれまでの人生で好きの中で「やめられないほど好きなこと」はありましたか?
やめられないほど好きなことを諦めないこと。
シンプルだけど、とても大切だなって感じました。
私の好きをもっと大切にできたらいいなって思えるインタビューでした。